お知らせ

一覧へ戻る

2015.10.21『まるごと 日本のことばと文化』ミニ解説 その1『まるごと』と文型

『まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)から初中級(A2/B1)までの開発者である、来嶋洋美先生に、『まるごと』ついて解説していただきました。「文型」「Can-do」「異文化理解」という3つの観点から語られた『まるごと』の特徴を、全3回にわたってお伝えします。

********************
こんにちは、著者の来嶋です。
これから『まるごと』について、3回にわたってお伝えしていきます。今回はその第1回目「『まるごと』と文型」です。
『まるごと』は課題遂行能力の養成、つまり、日本語を使ったコミュニケーション行動に必要な力をつけることを目指しています。「かつどう」編と「りかい」編があって、「かつどう」では日本語を実際に使う力を、「りかい」では文字・語彙・文法・文型などの力をつけることが目標です。では、「りかい」について簡単に解説していきます。

『まるごと』「りかい」編の文型学習の特徴
『まるごと』では、「文型学習は最終目標ではない。コミュニケーションを支えるために行うものだ」と考えています。ですから、『まるごと』で学習する文型は、初めからリストになっているというよりも、コミュニケーションのために必要なものを拾い上げるという考え方で決めていきました。こんなことを言うと、「どうやって?」と心配そうな声が聞こえて来そうですが、もちろん、やみくもに決めたわけではありません。従来の初級文型をながめながら作業を進めていきました。というわけで、『まるごと』の文型には、文型シラバスの教科書(『げんき』や『みんなの日本語』)とだいたい同じような項目が挙がっています。取り上げ方としては、「単純なものから複雑なものへ」。主な活用形で言えば、テ形・タ形・ナイ形・辞書形を初級1(A2)で、受身形・可能形を初級2(A2)で、条件形・意向形を初中級(A2/B1)で導入する、という具合です。入門(A1)では、動詞/形容詞/名詞述語文のほか、「〜ができます」「〜はだめです/だいじょうぶです」など、汎用性が高くて覚えやすい、単純な表現を導入しています。

さて、コミュニケーションのための会話を出発点にして、そこで必要な「使える日本語を学ぶ」というのが『まるごと』の方針なのですが、文型学習上の特徴を簡単にご紹介します。

1)文型の説明はできるだけシンプルにする
知識の学習なら文型や文法の説明はいくらでも詳しくできると思いますが、『まるごと』では会話の中で必要な意味だけを理解すればじゅうぶん。そのほうが、文脈と合わせて記憶にも残りやすくなることでしょう。

2)必要なら、複数の課で同じ文型を学習する
効果的なコミュニケーションのために必要な文型は、トピック・場面・文脈を変えて繰り返し導入、練習していきます。
つまり、よく使う文型は複数回学習するということになります。この点、文型シラバスの教科書とは、配列的に少し違う見え方をしているかもしれません。

3)「使える日本語」のための工夫
文型練習で使う文はすべて、トピック内容に沿った場面を想定したものです。また、会話音声を聞く練習も取り入れました。口語表現としての自然さも考慮しています。例えば、「V-てはいけません」「V-ちゃだめです/いけません」(初級2)は、各々書き言葉と話し言葉を想定した練習で使い分けるように誘導します。(←いったいどんな内容なのか、気になるでしょう?)

4)「りかい」で取り上げていない文型
『まるごと』入門(A1)、初級1・2(A2)、初中級(A2/B1)を通して学習する文型は、初級の文型をだいたいカバーしていますが、あえて取り上げていないものもあります。たとえば、使役や使役受け身など、文型の機能がA2レベル(基本的な日本語を使って、身近で日常的なやりとりができるレベル)を超えていると思われるもの。また、同じような機能の文型がほかにあるので重複して練習する必要性が低そうなもの、です。例えば「〜つもりだ」。これは「〜たいと思う」を使えば基本的なコミュニケーションにはあまり問題ないと考えて、学習項目に入れませんでした。

「かつどう」編との関係
ここまで『まるごと』「りかい」編に焦点をあててお話ししましたが、実は「りかい」編の文型を拾い上げている会話は、「かつどう」編の学習目標になっている会話(目標Can-doの会話)と共通のものです。両編は同じCan-doの達成を目指して、別の方法で学習する教科書なのです。ぜひ「りかい」と「かつどう」を見比べてみてください。教室活動の具体的なイメージが湧いてくると思いますよ。

第1回目はいかがでしたか。次回のミニ解説のテーマは「『まるごと』とCan-doについて」です。
どうぞお楽しみに!

来嶋洋美(国際交流基金日本語国際センター)


ACTFL Exhibitor Workshop
Understanding and Respecting other Cultures: Japanese Course Book Marugoto
講演者:来嶋洋美/Hiromi Kijima(国際交流基金/Japan Foundation)
協賛:アメリカ紀伊國屋書店/Kinokuniya、JPTアメリカ/JPT
日時:2015年11月21日(Sat.) 3:30 PM – 4:20 PM
会場:San Diego Convention Center
   Room: Workshop Room #3, Exhibit Hall B-C