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2015.11.02『まるごと日本のことばと文化』ミニ解説 その2『まるごと』とCan-do

『まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)から初中級(A2/B1)までの開発者である、来嶋洋美先生に、『まるごと』の特徴について解説をしていただきました。その2は、『まるごと』とCan-doについてです。

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こんにちは。著者の来嶋です。『まるごと』ミニ解説、第2回目の今日は『まるごと』の設計上とても大事な柱であるCan-doについてご紹介します。皆さんは、Can-doという用語を聞いたことがありますか。
前回お伝えしたように、『まるごと』は課題遂行(日本語を使ったコミュニケーション行動)に必要な力をつけることを目指す教科書で、2つの主教材、「かつどう」編と「りかい」編があります。「かつどう」の学習目標は「具体的な言語活動」なので、日本語で何ができるようになるのかを、学習者にわかりやすく示す必要があります。例えば「家族の写真を見て話します」とか、「休みの日に何をするか話します」など、日本語を使って具体的に何ができるかを表しているのです。これらの文をCan-doと呼んでいます。もう、お気づきかもしれませんが、Can-doは目標設定だけでなく、評価にも使えるんですよ!
では、解説を始めましょう。

Can-doのレベル・種類(5技能)と『まるごと』Can-do
Can-doのレベルは、JF日本語教育スタンダードという枠組みが示す6段階(A1/A2/B1/B2/C1/C2)のレベルになっています。いくつかの例外はありますが、『まるごと』入門ではA1の、初級ではA2のCan-doを扱っています。言語活動のCan-doには、「やりとり・話す・書く・聞く・読む」の5つの技能があり、『まるごと』入門〜初中級の場合、全体の約75%が「やりとり」と「話す」に関するCan-doです。実際に練習する会話(Can-do会話)の例を2つご紹介しますので、場面を想像しながら読んでみてください。(Can-doはコースブック用に単純化して書いてあります)

【例1】入門(A1)トピック3「食べ物」第5課「なにがすきですか」
Can-do 10:ほかのひとに飲み物をすすめます(A1)
(セルフサービスで好きな飲み物をとる場面)
  A:コーヒー、飲みますか。
  B:はい、お願いします。
  A:はい、どうぞ。
  B:すみません。

【例2】初級1(A2)トピック6「食べ物」第12課「おいしそうですね」
Can-do 31:味について簡単にコメントします(A2)
Can-do 32:友だちに食べ物をすすめます/すすめにこたえます(A2)
(ピクニックで、お互いに持ち寄った食べ物を楽しむ場面)
  A:やぎさん、よかったらサラダ、どうぞ。
  B:はい、いただきます。このサラダ、ちょっとからくて、おいしいですね。
  A:そうですか。もう少しどうですか。
  B:ありがとうございます。でも、もうおなかがいっぱいです。
  A:そうですか。

いかがですか。トピックは2つとも「食べ物」。でも、それぞれのレベルでCan-doの難度が違って見えますよね。『まるごと』は、初中級までに同じトピックが何度も使われていますが、そのトピックを軸にして、Can-do会話や学習する語彙・文型が広がっていくのです。
ちなみに、JF日本語教育スタンダードは、ヨーロッパのCEFR(Common European Framework of Reference)と共通のレベルとCan-doです。CEFRのA1、A2はACTFLのOPI尺度の初級、中級に相当するようです(牧野2008)。

「かつどう」編のCan-doと「りかい」編の文型
「かつどう」の授業では、上のようなCan-do会話とそのバリエーションを使って、「聞く→表現形式と意味を発見する→話す」という教室活動を行います。会話文は、学習者が生活の中でよく遭遇しそうな場面を設定し、そこで交わされそうな、自然な日本語を重視して書きました。この会話の中にある重要な表現形式を、前回ご紹介した「りかい」で、学習文型として取り上げています。つまり『まるごと』は、「かつどう」も「りかい」もCan-doが出発点となっているのです。

Can-doを目標設定と評価に使うメリット
Can-doは具体的な行動を書き表した文なので、学習目標としてとてもわかりやすいというメリットがあります。毎回の授業のあとで、どれだけ目標が達成できたかを学習者自身で評価しやすいし、家族や周囲の人たちにとっても、学習者が日本語でできることは何か、授業で学習したのはどんなことなのかがわかりやすく、サポートしやすいのです。そして、Can-doは数えることもできるので、入門から初中級まで学習を続けた場合、約200のCan-doがリストアップされることになります。「外国語で何かができる」ということは、大人でも嬉しいものですよね。Can-doの内容をよく吟味し、レベルに従って慎重に配列することで、学習動機や意欲を高める効果も期待できると思うのです。

ミニ解説、次回のテーマは「異文化理解」です。
どうぞお楽しみに!

<参考文献>
牧野成一(2008)「OPI、米国スタンダード、CEFRとプロフィシェンシー」鎌田修・嶋田和子・迫田久美子編著『プロフィシェンシーを育てる―真の日本語能力を目指して―』凡人社、18-39

来嶋洋美(国際交流基金日本語国際センター)


ACTFL Exhibitor Workshop
Understanding and Respecting other Cultures: Japanese Course Book Marugoto
講演者:来嶋洋美/Hiromi Kijima(国際交流基金/Japan Foundation)
協賛:アメリカ紀伊國屋書店/Kinokuniya、JPTアメリカ/JPT
日時:2015年11月21日(Sat.) 3:30 PM – 4:20 PM
会場:San Diego Convention Center
   Room: Workshop Room #3, Exhibit Hall B-C